「もっ……もしもし!」 『あ、俺』 「は、はいっ」 『テンパりすぎ』 くくっと笑う翼先輩の声が、耳元で聞こえる。 あたし今、一番近くで大好きな人の声を独り占めしてる。 なんて贅沢なんだろう。 「あ、何か用事ですか?」 ハッと我に返った。 『んー……、何だろうね』 「え、あれ……?」 用があったわけじゃないの? 『なんか』 『話したかっただけ』 サラリと言う翼先輩に、あたしの顔は耳まで真っ赤になる。 こんな甘い言葉をもらえるなんて思ってもみなかった。