「はぁ………まあ、わかってたけど」 グラスから顔を上げた櫻庭さんは、切ない表情をしていた。 「え……?」 「初めて会った時から、危ないって思ってた」 「初めて……会ったとき…?」 学校の校門で、初めて櫻庭さんに会った日を思い出す。 「だって、翼が笑ってるんだもん…」 伏し目がちな寂しそうな瞳は、少し潤んでいて。 「あんなに優しく笑うなんて、知らなかった……!」 何も言えなくて、手に持っていたグラスに力を込めた。