32回、好きって言うよ。





「はぁ………まあ、わかってたけど」





グラスから顔を上げた櫻庭さんは、切ない表情をしていた。





「え……?」



「初めて会った時から、危ないって思ってた」




「初めて……会ったとき…?」





学校の校門で、初めて櫻庭さんに会った日を思い出す。





「だって、翼が笑ってるんだもん…」





伏し目がちな寂しそうな瞳は、少し潤んでいて。




「あんなに優しく笑うなんて、知らなかった……!」




何も言えなくて、手に持っていたグラスに力を込めた。