「あの……」 「ん?」 「茉桜です」 「は?」 「あたしの名前………茉桜、です」 「…知ってるけど」 サラッと言う翼先輩に、えぇっ、と叫んだ。 「知ってるんですか!?」 「……知ってるでしょ。 彼女の名前くらい」 かあぁっと熱が集中する頬。 「何赤くなってんの。 ……茉桜」 初めて呼ばれた名前に、心臓がドキドキうるさい。 耳がくすぐったい。 珍しいわけじゃない、どこにでもいるような“茉桜”って名前だけど。 すごく特別な響きに感じた。 真っ赤なあたしを、夕焼けのオレンジが包んでいた。