白狐のアリア

 会合は何事もなく終わった。

 特にどの地にも揉め事はなく、強いて言うならば、西のある山を巡って大猿と鬼蜘蛛が度々喧嘩を起こしては、近場にいる百鬼の者が仲裁に駆り出されて迷惑甚だしいだとか、その程度。

 それすら、そんなどうでもいいことはこの場で言うなと、周りの者に糾弾されて終わった話題だった。



 それは、会合も終わり、白火の治める地へと戻る最初の晩のこと。まだ日が沈んで間もない時。

 白火は帰りの牛車の中に片膝立てて座ったまま、眠っていた。


――…火、白火や


「ッ!?」


 バッと飛び起きた白火に、向かいで火の玉と戯れていた藻女が小首を傾げた。


「お兄さま、どうかなさったの?」

「いや…」


 周りを見回しても、当たり前のことだが誰もいない。