「あの、この森を出たらすぐ近くにある王都に着くまで一緒にいて欲しいんです」
「いるだけ?」
「はい。あ、えっと、また盗賊とか狼が来たら撃退して欲しいです!」
「……ふん。まあ、良いだろう。小娘、その都に着くまでお前の身は護ってやる」
彼が何を考えて聞き返したのか分からなかったが、兎に角これで道中身の安全は保証できるだろう。安心したら疲れがドッと出てきた。
火を囲んだままうつらうつらし始めたアリアに、白火は一言「寝ろ」と言うと、手頃な木に背を預けた。
「あ、でも火の番を…」
「俺が見てる」
「交代は…」
「お前は歌を対価に身の安全を買った。俺はそれを了承した。雇い主が俺に気を使うな。それは俺への侮辱だ」
「は、はい。ごめんなさい」
そんな解釈もあるのかと身を硬くした。白火はもう一度「寝ろ」とだけ言うと、目を瞑ってしまった。
アリアはころんと横になると、ごつごつした寝心地最悪の地面に眉を寄せた。
だが疲れとは凄いもので、寝れない寝れないと思っているうちに自然と夢の世界へと誘われていったのだった。
