「――…♪」
時間にして数分。ただ、歌い終わった後の余韻に、白火はしばらく浸っていた。
1分近くもそのままだったからだろう。アリアがよもや寝たのではあるまいかと心配し始めた頃、パチリと白火の目が開いた。
「あっ」
心の準備ができていなかったアリアは見えた青灰に思わず声をあげた。未だぼうっとしている白火に、おずおずと声をかける。
「あ、あのぅ…、ッ!!」
焦点をアリアに合わせると、白火は薄く微笑んだ。アリアが初めて真正面から受け止めた笑みだった。いや、受け止め損ねたかもしれない。
顔を真っ赤にしてしゃがみこみ、なにやらうにゅうにゅ呟いているアリアを気にも止めず、白火はサラッと言った。
「お前の望みは?」
顔面から煙を出していたアリアは、その言葉の意味を飲み込むのに時間がかかった。
「……えっ?」
(ああわたし、さっきからまともな言葉を喋ってないなあ…)
「対価は貰った。お前の望みを聞こう。もう一度言え。詳しく」
(あ、「あんた」から「お前」に変わった…て、そうじゃなくて!!)
「い、いいんですか!?」
「ああ。……いい声だ」
「あ、ありがとうございます!」
世辞は言わなそうな白火に褒められて、くすぐったい気持ちになる。早速アリアは“お願い”を口にした。
