白狐のアリア

 もう味がしなくなってきた薄荷を口から出して、焚き火にくべる。パチパチと盛んに燃える火は、あっという間に植物をのみこんだ。


「これで、【歌姫】についてはわかっていただけたでしょうか?
 見習いであるわたしは王都の王城にいって、そこにいらっしゃる【凍柩の歌姫】様に正式な歌姫としての【紋章】をもらう旅に出ている、というわけです。
 ちなみに王都はこの森を抜けたらすぐです」

「ふむ。で?」

「…ええと、わたし路銀を歌を歌って稼いでいまして…あ、この歌はただの歌ですよ。流行りのとか。その歌を披露する、ということで……だめですか?」

「俺はまだお前の“お願い”を聞いていない」

「…森を出るまで、わたしの護衛をして欲しいんです」

「あんたにはその大層な謡があるんじゃないのか」

「たしかに魔物を此の面に出すことは可能です。けど、わたし武術はからっきしなんですよ! むしろ森に住む狼とかの方がよっぽど怖いんです! また盗賊が来るとも限りません……だから」

「守ってほしいと」

「はい。……だめでしょうか…」

「ふん。まずはその大層な自信の歌とやらを披露してからだな。さあ、歌え」