白狐のアリア

 兎に角、今はこの青年のの疑問に答えるべきだ。そして依頼を受けてもらう。非力だからこそ、持てる手札は全て使わないと。


「ええと、じゃあまずは魔物の存在からご説明します。
 …あああ、そんな嫌そうな顔しないでくださいよ! ええと、これは恩を売ってるわけじゃないんです。
 聞いてください。耳塞がないで! この説明も全部依頼に入ってるんですよぅ!」

「……きゃんきゃん叫ぶな。煩い」

「きゃんきゃんって……。じゃあ聞いててください。
 って言っても、わたしも日曜学校で牧師さまから聞いた程度の知識しかないんですけど……」


 この世に、世界は2つあると信じられていた。ひとつは今アリアたちがいる“此の面(も)”。
 そしてもうひとつは、魔物たちがいる“彼の面(も)”。

 2つの世界は重なり合っていて、だが完全に重なっているわけではない。

 表と裏、此の面と彼の面は、互いに違う進化を遂げてきた。
 表、此の面は、人が住みやすい、穏やかで平和な地。
 裏、彼の面は、大いなる自然が悠久の時を超え現在も脈動している。


「原因不明の地震が起きたりしたときは、大抵彼の面で噴火がおきたとか、そういう理由です。
 そして、そんな荒々しい地に生きている魔物は、食べ物がありません。いえ、ないというと語弊がありますが、こう、大変というか…伝わります?」