白狐のアリア


「え、いいんですか?」

「ああ。これで貸しは無しだ」

「ありがとうございます!」


 さっきまでの遠慮はどこへ行ったのか、肉をふんだくってもぐもぐと食べる様を、白火は面白そうに見つめていた。

 すっかり満腹になった腹をぽんぽんと叩くと、ふと清涼感のある香りがアリアの鼻をついた。ふと見ると、青年が何かをシコシコ噛んでいる。


「何ですか? それ」

「薄荷の一種」


 無愛想にいいながら、瞳はちろちろと燃える焚き火を写している。


「はっか?」

「知らないのか」


少々驚いたような顔をすると、手に持っていたもう1本を差し出した。


「……根っこみたい」

「根だからな」

「根っこ食べるんですか!?」

「川で洗った。土はついていない」

「……」


 それでも幾分か抵抗はあったものの、結局好奇心が勝って手を伸ばす。


「あっ」

「美味いだろう」