白狐のアリア

 食べやすい大きさに切り分けた肉を木の枝に指すと、大きめの石を上手く使って焚き火の側にさした。

 やがて肉が焼けるいい匂いがあたりに広がる。
 アリアも、先程までの拒否感が薄れ、むしろ空腹に耐え切れなくなってきたところだった。


「そろそろいいだろう。食え。塩も何もかかっていないが、そこは我慢しろよ」

「え、わたし、食べていいんですか?」

「その為にわざわざ焼いたんだろう」


 何を言っているんだこいつは、という目で見られると、なんだかアリアが間違っているような気がしてくる。
 ちょっと考えるとつまりその言葉は自分ひとりなら生のまま食べるということにつながるのだが、そこまで今のアリアは頭が回っていなかった。


「ありがとう…ございます……」


 女の自分より白く綺麗な手(妙に爪が長いのが気になるが)から肉を両手で受け取ると、ごくりと唾を飲んで夢中で食べ始めた。確かに塩もハーブもないただの肉だが、空腹が最大のスパイスとなって、あっという間に1本ぺろっと食べてしまった。

 骨までしゃぶっていると、クスクスという笑い声とともに、目の前にもう1本、肉が差し出される。