白狐のアリア


「……小娘、飯は食べたのか?」


「え? いえ、食べてませんけど…大丈夫です! 食べられる野草は知ってますし、すぐそこに小川も流れてますから。あと1日もあれば森を抜けられますし、それまで何も食べなくても死にません!
 それからわたしの名前はアリアです」


 なんとも逞しい答えにため息を着くと、森の奥へと歩き始めた。後ろでわたわたと立ち上がる音がする。


「え、どこへ――?」


 そのまま木立の影に消えると、獣人の青年の姿はゆらりと消えた。

 慌てて後を追ったアリアは、だが白火の姿が消えたことに気づくと溜息とともに再び座り込んだ。


「……なによ。そんなにすぐ消えることないじゃない」


 知らず愚痴のようなものが溢れる。が、そこでふとロバのそばの刀の存在を思い出した。


「あ、これ……忘れ物?」


 だが、今まで受けたアリアの白火に対するイメージと、"忘れ物"という言葉はあまりにミスマッチだった。