「いや、問題ない。礼を言う、小娘」
「いえいえ、そんな! こちらこそ助けていただいて…あ! 助ようとしたわけじゃないんですよね、結果的に…そうなっただけで……」
だんだん声が小さくなる。同時に肩まですぼめてちらりとこちらを上目遣いに伺うが、何に怯えているのか。特に怖がらせた覚えはないが。
「……とりあえず、礼は貰っておこう、小娘」
「は、はい!」
たったそれだけで妙ににこにこと嬉しそうだ。
「…あと、わたしアリアっていいます。アリア・ロレンス。あなたは?」
それには答えず、すらりと立ち上がると軽く羽織をはたいて肩にかけた。見回すが、本当に手持ちの荷物は全て奪われたらしい。火の周りには老ロバとアリア、白火しかいなかった。
ロバのそばにはきちんと愛刀も添えられているのに安心する。
