「今、キ、キ、キ……!」
あまりに衝撃的すぎて、言葉が出てこない。
きょとんと首を傾げる白火は、南蛮語に縁のない生活を送っていたため、何が言いたいのか理解できないまま。
2人の間に沈黙が落ちた。
「き?」
「キス! キスしたでしょう! わた、わたしの、めめめめめ目元に!!」
「きす? ……ああ、接吻のことか」
「せっぷん!!」
なんだかキスよりも更に生々しい響きに、わなわなと口元が震えた。なんなのよこの獣人は!
「そんなことより…」
「そんなこと!」
仮にもアリアのファーストキスだったのだ。
こんなご時世であるし、もともと孤児だったからそういう夢はあまり描かなかったアリアだが、それでも初めてはもうちょっとムードとかそういうのを選びたかった。
それに、アリアは周りの人間のように獣人に偏見を持っているわけではないから「恥ずかしい」で済んでいるが、これがもしも富裕層の人間相手だったら直ちに衛兵に突き出されて処刑されかねないということを、この狐の青年はわかっていないらしい。
