白狐のアリア


「引け。ここで引かねば、死人を出すぞ。
 どうせこの小娘からありったけの荷は奪ってるんだろう? それで我慢しろ」

「くっ……」


 アリアを“確認”しようとしていた盗賊が呻く。
 どうやら彼がこの盗賊団のリーダーだったらしい。


「……野郎ども、引くぞ」

「なっ、頭!?」

「引けぇい!!」


 わたわたと男たちが引いていく。
 各自の馬に飛び乗ると、一目散にアリアが逃げてきた方面へと消えていった。

 あとには、多数の馬の足跡と座り込んだ老ロバ、何が起きたか分かっていないアリア、腕を組んでそれを見送った白火の姿だけが残るのみ。


「……あの、ありがとう、ございました」

「なんだ、小娘。まだいたのか」

「へ!?」


 まさかそんな言葉が返ってくると思わなくて、思わず変な声を上げてしまう。