「せっかくいい気分で探索していたというのに――」
溜息とともに瞳を伏せる。嘆息するだけでも絵になるその姿に魅せられる。
首をカクンと傾けると、さらりと長い髪が頬にかかった。
「――失せろ、下衆が。汚らしいモノを俺に見せるな」
「…んだと!? テメェェエエ!!」
取り囲んだ1人の盗賊が、腰の剣を抜いて彼に斬りかかる。
「きゃあああッ」
思わず目を瞑って悲鳴を上げる。だが、周りの盗賊のどよめきに恐る恐る目を開けた。
「ぐはっ……このっ…離せっ……!」
「殺してやってもいいが、悪いが俺はこんな下衆どもの血を浴びたくないからな。
本当なら触るのも遠慮したいくらいだが――」
「わああああああ!」
「――ったく、血の気の多い」
片手で首を掴んで上に持ち上げていた彼は、また1人特攻してきた盗賊に、持ち上げていた男をいとも軽く投げつける。
「「ぎゃああああ」」
当然、大の男ひとりを投げられて無事なはずもなく、バキッと嫌な音をたてると、倒れ込んだ男達は起き上がってこなかった。
うめき声は聞こえるから、どうにか生きてはいるんだろう。
