「なんだてめェ。これからお楽しみなんだよ。見て分かんだろ、どっかいけや」
「ふん。そんな枯れ枝みたいな小娘を大勢で囲うのが好みなのか。随分な趣味の持ち主だな」
心底見下したというような視線で見下ろされる。
が、盗賊は怒りの表情から一点、にやにやとまた卑下た笑みを浮かべ始めた。
「これはこれは。随分な上玉じゃねえか。
見たところ獣人のようだが、相当高くつくぞこりゃあ」
触れるだけで切れそうな、硝子のナイフのような危うい美しさを持つ彼に、こんな時だというのにアリアも目が釘づけになった。
月光のような淡い色合いの真っ直ぐな長い髪は腰下まであり、東の大国シンでよく見る紺色のキモノに身を包んでいる。
腰には剣と思しき細長い何かを差し、腕を組んで立っている姿は凛々しく、美しかった。
この世界では蔑まれる対象となる獣人の証――狐のような三角形の耳と、ふさふさの尻尾が生えていても。
否、それすら彼の魅力を引き立てる役目を果たしていた。
(……ちょっとずぶ濡れなのが気になるけど)
