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「お願いだから、頑張って!」


 少女は今、ロバの背に身を伏せて恐怖に身を震わせていた。


「ハッ…ハッ…ハッ…ハッ」


 少女が声をかけたのは自分が乗っている老いたロバ。
 荷物は少女のみ――しかもお世辞にもふくよかとは言えない痩せぎすの少女――なら力持ちであるはずのロバにとっては軽いはずだが、そのロバは息を切らして全力疾走していた。


「ははははは! おーい、待ってくれよぉーい!」


 後ろから聞こえるのは10頭の馬の荒い足音と、下品な笑い声。

 この森を根城にしている盗賊だった。