水音を立てて湖から飛び出した。
 足から入ったのに頭から出るのは違和感があるが、今はあの天女の話の通りかどうか確かめるのが先決だ。

 数百年前の若僧に戻ったように、好奇心が止まらなかった。

 頭から濡れて出た先も湖のほとり。
 今はまだ昼前のようで、明るい太陽は昇りきっていなかった。

 天女と会った森より明るいと感じるのは、単に太陽の力だけでなく、木々がそれほど茂っていないということもあるようだ。

 ひとしきり観察を終えた白火は、とりあえず辺りを散策することに決めた。
 女神の言う通りなら、ここでは名も知らぬ強者がいるはずだ。

 ブルルッと全身を震わせて水気を飛ばす。着物は濡れたままだが、まあ風邪もひかぬ体だし、問題なかろう。
 天女は疲労がどうとか言っていたが、寧ろ久方ぶりの興奮におちおち寝てられぬ。


「さて、行くか」


 まずはこの興奮で火照った体をどうにかせねばなるまい?