私は、もう母の事を思い出したくない。 忘れていたい、今の――――ある程度の普通の暮らしを、壊したくない。 「私は、もうそんなのいらない。捨てておいて」 そう吐き捨てて、私は布団を頭から被った。 私はもう、あんな悪夢を見たくはない。 「――――分かりました」 トンッと襖が閉められ、私は再び一人になった。 部屋には、嫌なほどに静かな空気が流れる。 どうして・・・・・彼らは、私を気味悪がらないのか。 聞きそびれた事が、今になって気になり始めた。