そう言いながら懐に手を入れ、取り出した物。 夕陽に照らされ、彼の手で微笑むそれは―――― おもちゃと言って良いのか分からないけれど。 母が私に、最後に贈ったこけし人形だった。 驚きと、込み上げてきたまた別の感情で視線が揺らぐ。 その動揺を感じ取られないよう、あえて冷たい顔を向けた。 「・・・・・捨ててくれても良かったんだけど」 「何でですか?ずっと、持っていたのでしょう?」 それを私の手に乗せようとする彼の手を、バシッと叩く。 驚いたように私を見る彼に、僅かに罪悪感が生まれた。