「・・・・・ほんとか?」
感情の無い声で私に尋ねる彼に向かって、小さく頷く。
むしろ、一番関わったであろうこいつに関しても名前を知らない。
別に、こちらからは関わろうともしないが・・・・・
これから、半軟禁状態になるのだろうから、こいつ位は名前を知っておきたい。
心の中だけだからとはいえ、“美丈夫”というのは如何なものか。
私の中には、泉箕もいる。
神無月(旧暦の10月)以外は、ずっと私の中にいるか傍に――――
「・・・・・あ」
「ん?どした?」
そうか・・・・・自分が忘れていた、何年も経験していること。



