あーあ、本当、予想していたより壬生狼は狼じゃないな。 『ふふっ、泣く子も黙る壬生狼が、狼じゃなくなっておるの』 同じ事を考えていたのか、泉箕は声を立てて、笑っていた。 そして、もう一度私の耳元で、小さく囁いた。 『ありがとう、千歳。 ――――ずっと、愛してる・・・・・俺の、娘よ。 幸せになって、こっちへおいで』 最後の泉箕の言葉は、たったのそれだけだった。 静かに泉箕の背中は消えて行き、私の手元には何も無い。 最後の声は、どこか遠くから響いてくるかのようだった。