土方は無理をする人だから、と一言残し、奥沢は稽古へと戻っていった。 その後姿を見送りながら、私はあの時宙を掴んだ手を見つめる。 「――――戻る、か」 そう呟いて、私も屯所へと歩みを進める。 屯所へ近付く度に、緊張と、張り詰めた空気と、隊士の稽古の声が響く。 そんな空間を、土方は守ろうとしていた。 その事実に、私はふっと微笑む。 土方ののし上げて来た新撰組は、隊士の、誇りだった。