「千歳さん、ちょっと良いですか?」 池田屋に斬り込む日が近付く中、たった独りきりの部屋の戸が開く。 襖から顔を覗かせたのは、きりりとした眉の下、綺麗な目をした隊士だった。 「えと・・・・・誰だ?」 「僕は奥沢。奥沢栄助といいます」 どこか、聞いた事のある声。 しかし、どこで聞いたかは、全く思い出せなかった。 「あの、少しお話出来ますか?」 その少し厳つい顔も、笑うと眉尻が下がって柔らかい顔立ちへと変化する。