『千歳、千歳・・・・・千歳――――』


「止めてっ、呼ばないでっ!!」



何度も呼ばれる自分の名前に、耳を塞ぐ。


どうして、こんな時に土方はいないの?


夢じゃないのに、幻を見ているわけでもない。


耳元で囁かれる懐かしい声に、涙が零れる。



腐り果てた家屋の中で、もう無い母さんの姿。


ふわりと残った、あの懐かしい香りに包まれる。



『チトセ、イク・・・・・コッチ、クル』


「――――ッ!?」


キィキィと、耳障りな音が母さんの声の代わりに聞こえ始める。