――あれは中三に上がりたての春のことだった。


園芸部に所属していた私は放課後、温室で冬越しさせたパンジーを花壇に移していた。


白、黄色、オレンジ……色違いの花を規則正しく植えていき、それらを花の小さい紫のビオラで囲む。


あの頃は大好きだった花の世話……それに夢中になっていた私の元へ、あの男――岡澤正和(おかざわまさかず)が現れた。



「精が出るなぁ」



そう言いながらにこやかにに近づいてきた岡澤。

私は、何の警戒心も抱かず笑顔で「はい」と答えた。


岡澤は二年の頃から私の担任で、テレビドラマの熱血教師に憧れて先生になったと言うだけあって、その指導は熱くて心がこもってた。


でも決して暑苦しいわけではなく、生徒の気持ちをわかってくれるいい先生だなと思って信頼していた。