「――――まさか、プロポーズして旅立つとはねぇ」
展望デッキを囲むフェンスを掴んで、飛び立つ飛行機を見つめる有紗がつぶやいた。
「さすが恩田先生。これでもう、土居くんは手を出せないわね」
「……うるせえ。なんで残った俺がこんな敗北感に苛まれなきゃならないんだ。あーあ、ライバルが恩ちゃんじゃなきゃなぁ」
「高校生にダイヤは買えねえもんなぁ」
ベンチに座る菜月ちゃんと土居くんと小林くんの、そんな会話が聞こえる。
私はというと、有紗の隣にぼうっと立っている。
そしてさっきから薬指できらきら輝く透明な宝石を、太陽に透かして眺めているばかりだ。
きれい……
本当に……
先生は私との将来を……?
「三枝さん」
ふいに私を呼んだのは、杉浦くんだ。振り返ってみると、彼は茶封筒を私に差し出している。
「あ……これ、こないだの」
中から出てきたのは、何枚かの写真。
一番上は、記憶に新しい……
先生の最後の授業の後、クラスみんなで撮った記念写真。
二枚目は、文化祭の時に、光沢のあるスーツでホストに変身した先生の写真。
そして、三枚目は……