「――あ、あそこじゃない?待ち合わせのお店」
広い空港内をさ迷いながら、なんとか約束の時間までにそこにたどり着くことができた。
壁のないカフェの席に、遠目からは先生っぽい人は見えない。
「まだ来てないのかな……」
携帯を確認してみるけど、とくに連絡はない。
「三枝、時間間違えたんじゃねーの?」
「こんな大事な日に千秋がそんな間違いするわけないじゃん、ばか土居」
「じゃあ恩ちゃんが寝坊」
「それはもっとないと思うよ、小林くん」
あーでもないこーでもないと言い合っている間に、私は仲間の一人の姿がないことに気付いた。
「ねえ、杉浦くんは……?」
「そういえば……」
みんなでぐるりと辺りを見回すと、すぐに土居くんが声を上げた。
「あ……いた」
「え、どこ?」
「あそこ……誰かと一緒に居る。いや、誰かって言うか……」
「先生……」
50メートルほど先のお土産屋さんの前から、杉浦くんと並んで歩いてくる先生。
二週間逢わなかっただけなのにすぐにでも抱きつきたい衝動に駆られて、私の胸がぎゅうっと縮む。
笑顔で見送りたい……
そんな想いは、一瞬で心の隅の方へ追いやられてしまった。

