金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


「千秋は、なんて書いたの?」


空港に向かって歩く途中、有紗が私に訊く。



「ふふ、私たちは見ちゃった」



菜月ちゃんが、そう言って微笑む。



「…………秘密」


「えー!みんなは見たのに私だけだめなの?いいもん、勝手に見てやる」



がさっと紙袋から色紙を出した有紗。

しばらくそれをじっとつめていた彼女だけど、しばらくすると静かに紙袋の中に色紙をしまった。



「……なんか、本当にもったいない。一番ラブラブな時期に二年も離れなきゃならないなんて」



私の書いた言葉を見たからか、有紗がそんなことを言う。



「そうかな。私は千秋ちゃんと先生なら、たぶんいつまで経ってもお互いにお互いを溺愛すると思うけど」


「……言われてみれば確かに。結婚しても、いつまでも新婚さんみたいな感じかもね」



有紗と菜月ちゃんが話すのを聞きながら、私はひとりうつむく。

……結婚、なんて。まだ高校生だし。

それに今の自分たちのことでいっぱいいっぱいだから、考えたことなかった。


だけど先生が帰ってきて、今と変わらない二人でいられるなら……


その時は、真剣に憧れてみたいな。

大好きな先生との、幸せな結婚生活に。