金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


綺麗なうろこ雲が青い空いっぱいに広がる、気持ちのいい秋の日……

私は駅で有紗と待ち合わせをしていた。


その間、何度も小さな鏡で自分の顔を確認しては、ため息をつく。

昨夜一睡もできなかった私の目の下には、コンシーラでも隠しきれなかったクマがあるのだ。


最後くらい、自分の一番いい状態の顔を見てもらいたかったのにな……


「――おはよ、千秋」


「有紗。……おはよう」


「……ついに今日が来ちゃったわけだけど……覚悟はできた?」



有紗の言葉に、私は黙ってうなずく。


研修を終えて昨日の夜に電話をかけてきた先生は、もう現地に着いたらどうしたいとか、あっちの文化はどうだとか、僕の英語は通じるかなとか、気持ちはもう飛行機より先に飛んでいるみたいで……


私は寂しがる間もなく、まるで遠足の前みたいにはしゃぐ子供みたいな先生の話を聞いていた。


そして今日の待ち合わせ場所や時間を決めて、明るい雰囲気のままで電話は終わって……


だけどその反動なのか、電話を切った後でどうしようもなく寂しい気持ちに襲われて、私はまた涙を流していた。

たぶん、日付が変わるくらいまでは。


その後、このままじゃ目が腫れてしまうと思って濡らしたタオルをまぶたの上に乗せて、眠れそうにはなかったけれどベッドの上でぼうっと天井を眺めてた。