金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


先生は、私ほど離れたくないという素振りは見せないけれど。


私ばかりが寂しがっているような気がしていたけれど。


そんなことないって……先生だって、同じくらい寂しくてたまらないんだって、言葉の代わりに言ってくれているような気がしたから……



――お互いに力を使い果たして、汗と体液の滲む布団の上でくたりと横になっていると、先生が私の前髪を整えながら言う。



「見送りには、来てくれますよね?」


「もちろん、行きます」



私以外の何人かも行くっていうことは秘密だけど、私はそう答えて微笑む。



「ただ、直前はもうボランティアの参加者みんなで集合してしまうので……早めに行って、国際線ターミナルのどこかで少しお茶でもしましょう」


「わかりました。私はそのあと、先生の飛行機を展望デッキで見送りますね」


「……手を振ったら見えるかな」


「見えるわけないじゃないですか」


「冷たいな……僕だってそれくらい知ってますけど、愛の力で何とか……」


「無理ですね」



わざとしれっと言うと、先生が私の頬をぎゅむっとつねった。



「痛いです……」


「千秋がつれないからでしょう……そろそろ時間だと言うのに」


「時間……」



壁に掛けられた時計を見ると、もう16時を30分以上過ぎていた。

途端に私たちの間にある空気が暗いものになり、心地良く疲れていた身体がずっしり重くなったような気がした。