すると曽川先輩が、私の耳元に唇を寄せて言った。
「……あいつらを二人きりにさせたいんだ」
…………あ、そうか。
三人になったら、曽川先輩はちょと邪魔者になっちゃうんだ。
こうしてる間にも、有紗たちは二人の世界に入っていい雰囲気だし……
「……駅まで、なら」
「ん、サンキュ」
今度は笑顔だけでなく、大きな手で頭をぽん、と軽く叩かれた。
どうしよう、こんな些細なことが、嬉しい……
「――――角田、俺千秋ちゃんのこと送ってくからメシは二人で行ってくれ!」
「お、おぉ。わかった」
角田先輩も有紗も、急に二人にされて恥ずかしそうだったけれど、やがて仲良く手をつないで人混みに消えていった。
その後ろ姿を見ていたら、最初から二人で会えばいいのに、と苦笑にも似たため息が洩れた。