『色々な審査をされて、本当に行くことになるかどうか結果が出るのは八月です。その時が来てから、千秋には話そうと思っていました……こうして泣くだろうと、わかっていましたから。

でも、こうも思ったんです。きみなら、この夢を応援してくれるんじゃないかって……
……勝手だったかな』


『勝手……ですっ。私、そんなに大人じゃない……っ!』



私は、先生の服に濡れた顔を押し付けながら泣き叫ぶ。



『そう……そうですよね。僕は、きみがまだ10代だということを時々忘れてしまうみたいです。あまりに魅力的な女性だから……』


『そんなお世辞……いらないよ……』


『お世辞じゃないです。僕は、そんな千秋が大好きだから……たとえ二年離れていても愛し続ける自信があります。
……千秋は、離れたら僕を忘れてしまう?』



…………そんなわけ、ない。

だけど、それを言ったら先生はすぐにでも旅立ってしまう気がして、私は答えてあげなかった。


すると先生は私を抱き締める腕に力を込めて、絞り出すような声でこう呟いた。




『――――きみを連れていけたらどんなにいいか……』




『先、生……』




それを聞いたら、私はもう先生を責められなくなってしまった。


受け入れるにはまだ、時間がかかりそうだけど……

私のことを軽く考えて決めたわけじゃないというのは、わかったから。