金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


昼間は止んでいた雪が夜になるとちらついてきた。

窓を開け、手のひらで溶ける雪の感触を確かめると、なんだか切なくなってきてしまう。



「明日には、帰るんですよね……」


「……千秋、明日のことは、明日考えましょう。風邪を引いてしまうから、もう窓を閉めて」



暗い室内で、和紙で作られた間接照明が先生の顔を柔らかく照らしている。

既に布団の上で横になって、眠たそうな目をして私を見てる。

私は窓辺から離れて、自分の布団の上にそっと寝転んだ。



「先生、眠い……?」


「……どうやらそうみたいですね。でも、寝てたまるもんですか……」



先生の手が伸びてきて、私の手首を捕まえた。

だけどその力は弱くなったり強くなったり……

先生がうとうとしてきているのが伝わった。



「先生……?」



やがて動かなくなってしまった先生。

私はその身体に布団を掛けてから、「お邪魔します……」と呟いて先生の腕の中に潜り込んだ。



私のために頑張ってくれたから、疲れたんだよね……


ありがとう、先生。


大好きです……



新幹線の中で眠ったはずの私も、先生のぬくもりが心地良くて、そのまま眠りに落ちてしまった。