畳の上にぺたんと座りながらそれをずっと眺めていると、しばらくして先生がお風呂から出て来たので私は振り返った。
濡れた髪に浴衣姿……そして、ふわりと香った自分と同じシャンプーのにおいに、ドキンと胸が跳ねた。
「――もう、持ってきてくれたんですね」
先生はテーブルの上を見るとそう言って、私の隣に胡坐をかいた。
「もう……って、先生、知ってたんですか?」
「だって、これを頼んだのは僕ですから」
「え……?」
「ちなみに、ポインセチアを置いといてくれと言ったのも僕です。一日遅れでもやっぱり、千秋と過ごすならクリスマス気分を少しでも味わいたくて」
私は、床の間のポインセチアと、テーブルの上のショートケーキを交互に見つめた。
ケーキの上のチョコプレートに書かれた“メリークリスマス”の文字が、だんだん滲んで見えなくなる。
先生が私を抱き寄せて、小さく囁く。
「……どうして泣くの?」
「先生のせいです……」
「ケーキは、きらい?」
私は首をふるふると横に振る。
「…………うれし、くて……っ」
私の泣いてる理由がわかった先生はふっと笑って、用意されていたフォークで無造作に大きなケーキの塊を削り取ると、お皿に乗せて私に差し出してくれた。

