金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


「……そろそろ離してくれませんか?」



先生の胸にくっついている背中が緊張して、せっかくのお風呂なのにリラックスできない。

それに、ずっとこんなことしてたらのぼせちゃうもん……



「仕方ないですね……名残惜しいですが」



先生はゆるりと腕の力を抜き、最後に私の肩甲骨のあたりにキスをして、身体を離した。



「……千秋は先に上がっていて。僕はもう少し、あたたまります」



湯船に先生を残して、私は極力正面を見せないように素早くお風呂場から出ると、身体を拭いて自分で選んだ浴衣に袖を通した。

外していたペンダントも、鏡の前で付け直す。


肩にかけたタオルで髪を拭きながら部屋に戻ると、テーブルの上にさっきまではなかったものが置かれていて私は驚いた。



これは……旅館のサービス……?