私を抱き締めたまま、先生はふう、と息をつく。
「今日は時間がたくさんあるというのに、また僕は余裕をなくしてますね……」
そう言って、一度身体を離す。
「……いいんじゃないですか?時間いっぱい、くっついていても。こんな時間を過ごせること、きっとまた当分ないでしょう?」
「……本当にいいの?嫌だと言っても離れませんよ?」
「嫌だなんて言いません……今日はずっと、先生の側に居ます」
「…………言いましたね?」
先生が、何故だか意地悪な顔をして私を見ている。
そしてその視線が私の背後の何かに移ったことに気付き、私もそれを見ようと振り返った。
「……お風呂?」
口に出してから、まさか、と思って先生を見ると、ますます口元の笑みを深くしてこう言った。
「ずっと、側に居てくれるんですよね?」
「それは、あの……そういう意味じゃなくて……っ」
恥ずかしくなって先生の腕から逃れようとすると、ますます強く抱きすくめられて身動きが取れなくなってしまった。
「……逃げられませんよ、千秋」
「……そうみたいですね……」
私はため息をついて、先生の顔を見上げた。
するとすぐに視線が絡み合い、磁石みたいに唇が引き合う。

