金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


窓に面した障子を開けると日本風の庭が見えて、たくさんの木の葉が雪をかぶり、そろって首をもたげてた。



「いいところですね……」



窓の外を見ながら呟くと、先生も隣に立って、二人でしばらくその景色を見ていた。



「……少し、寒いですね」



そう言って暖房のスイッチを入れようと踵を返した私の腕を、先生が掴んで自分の方へ引き寄せた。



「……さっき、言いかけたことですけど」



――そういえば、“後で話す”と言っていたことがあったっけ。

あたたかな腕の中で、私は耳を澄ませた。



「寒い場所を選んだのは、その方がお互いの熱を感じられると思ったからです。
僕の手で熱くなる千秋を、普段より多く感じたい……だから、暖房は要りません」



……ああ、もう。

先生はいつもどうしてそんなに恥ずかしいことを言うんだろう。


手、だけじゃない。

いつもそうやって、言葉でも私を熱くしてるって、わかってますか……?