金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


駅を出ると、目の前はもう雪山。

東京では絶対に見られない白一色の世界に、寒さも忘れて見とれる私。



「おいで」



差し出された先生の手は暖かくて、指先からじんわりと、心まで熱が行き渡る。



「どこに行くんですか……?」



先生の足が向かうのは、スキー場のある山とは逆方向。

駅を出てきた人たちの波から外れて、足跡の少ない雪の上をサクサクと進む。



「……旅館です。本当のことを言うと、スキーなんてどうでもいいので」


「え……?じゃあどうしてこんな雪の多い場所に……」


「いつもとは違う景色を、千秋と見たかったんです。それと……もうひとつは、後で言います」


「…………?」