金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


先生との初めての遠出。

どんな景色も、先生のどんな表情も、見逃してなるものかと思っていたのに……



「――――千秋、あとひと駅ですよ」


「え……?」



瞼を開いて窓の方を向いた私の目に飛び込んできたのは、真っ白な雪景色。

私の記憶の最後にあるのは、灰色のビルの群れなのにどうして……



「私、もしかして……」


「気持ち良さそうに、寝てましたよ」



先生のにこにこ顔を、こんなに恨めしく感じたことはない。



「もう……こんな大事なときにどうして……!」


「昨日の夜、あまり眠れなかったんでしょう?大丈夫、まだ旅行は始まったばかりなんですから。それに……」


先生が、カチカチと携帯を操作して私に画面を見せてきた。

そこには、口を開けて熟睡する私の寝顔が。



「これが撮れたから、僕は嬉しいんです」


「ダメです!消して〜!」



わぁわぁ揉み合っているうちに、新幹線は私たちを目的の駅まで届けていた。

結局、先生があの写真を消してくれたかどうか定かではない。

……悔しい。旅行中に何か仕返しができないかな……