電話をしている間中、先生は言葉少なに「はい」とか「わかった」とか、相づちを打つだけだった。
何を想っているのかわからなくて不安になる私は、話が終わるのをただ俯いて待つだけ。
やがて電話を切った先生は、こちらに近づいてくると私の頭を撫でた。
「――小夜子が生きていると聞いたときから、なんとなくそうなんじゃないかと思っていました」
恐る恐る顔を上げると、その表情が悲しそうなものではなかったことにほっとして息をつく。
「……どうしてですか?」
「生きているのに、僕のところに戻ってこなかった。それはきっと、別の人が小夜子を支えてくれてるからなんじゃないかって……なんとなく、思いました。
思ったほどショックを受けていないのは、千秋……きみが居てくれたからですよ」
「でも私、なにも……」
「なにもしなくていいんです。ただ、そこに居てくれれば。」
先生はそう言って、私の手を取った。
本当ならその言葉に浸って、幸せを噛み締めたいところだったけれど……
「――時間がぎりぎりになってしまいました。新幹線乗り場まで、ダッシュできますか?」
「――――はい!」
あったかいコートにしてきて良かった。
有紗たちが選んでくれた服を着てきて良かった。
先生を信じて良かった。
この恋が終わらなくて、良かった……

