金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


「だって……先生は小夜子さんにずっと逢いたがってたじゃないですか……
その彼女が生きてるんですよ?私には二人を邪魔することなんてできな――――!」



言い切る前に、先生の唇が私の唇を塞いでいた。


思考がショートして、ただただ目を見開くことしかできない。


なんで今、キスなんか……


しかも、こんな場所で……


そんな気分じゃないし、恥ずかしいからやめて、という意味で先生の胸を押し返すと、鋭い眼差しが私を睨んでいた。



「……少し、落ち着きなさい」



両腕をがっちり捕まれてしまって、私にもう逃げ場はない。



「聞きたいことが、いくつかあります。……まず、小夜子のことは誰に聞いたんですか?」



誰に聞いたかなんて、そんなのどうでもいいことじゃないのかな。

誰に聞いたって、小夜子さんが生きてることに変わりはないんだから……


私が黙っていると、先生が言う。



「――――僕の姉ですか?」



はっきり言い当てられて、私は小さく頷くしかなかった。