金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


それから五分くらい経った頃だろうか。


私は遠くに、愛しいひとの姿を見つけた。


私を見つけられずにキョロキョロしながら歩き、その途中の自動販売機で飲み物を二本買っていた。



そのままこちらに歩いてきてその瞳が私の姿を捉えると、私の大好きな笑顔を向けられて胸がぎゅうっと締め付けられた。


これから小夜子さんのことを告げなければならないのに、私はまだこんなにも先生のことが好きで……


諦める覚悟なんて、ちっともできていなかったんだと、気づかされたから。