金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


――文化祭当日、うちのクラスは誰かさんのおかげで大盛況だった。



「えーっと、お姫様がた。うちのクラスでお茶でも飲んでいきませんか?」



棒読みの誘い文句で客寄せをするのは、この間と同じ真っ黒なスーツに身を包んだ先生。


本物のホストみたいに口のうまさはないけど、誘われた人はみんなはしゃいでクラスの中に入ってくれる。



「ちーあき!せっかくの休憩なんだから何か食べに行こう?」



私の肩をポンと叩いたのは、有紗。後ろで菜月ちゃんも微笑んでいる。


仕事の分担は、新しい班を決めるのが面倒と先生が言ったので、修学旅行の班がそのまま使われている。


でもそれは、修学旅行以来また学校に来なくなってしまった杉浦くんのためだということを私は知っている。

杉浦くんが「また三枝さんや土居くんと一緒なら文化祭に行く」と先生に言ったらしい。


今はカメラ係として、一人で色々な場所をまわってるみたい。



「――バスケ部の焼きそばは美味しくないらしいし、どうせ客寄せはムカつく曽川先輩だろうし、他の所に行こうね!」



行きたいクラスはたくさんあるけど、有紗についていけば間違いはなさそう。



「1Gは絶対に行きたいんだけど……いい?」



遠慮がちに言う菜月ちゃん。きっと木村先生に会いたいんだ。



「「もちろん!」」



有紗とハモってしまい、あははと笑い合う。

この三人で居る時間はとっても楽しくて大切。


菜月ちゃんが木村先生とうまくいっているのも、心から嬉しい。