金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


「有紗、彼氏できたの?」



有紗はより一層顔を赤くして、コクリとうなずいた。



「……昨日……同じバスケ部の角田(かくた)先輩に告白されて……今日は部活がないから遊ぼうって言われたんだけど、まだ二人きりで会う勇気は出なくて……」



こんな弱気な有紗は初めて見た。

彼女の新たな一面に驚くと同時に、可愛いな、と微笑ましい気持ちにもなる。


いつも活発でハッキリ物を言う有紗でさえ、恋をするとこんな風になるなんて……


恋がどんなものか知らない、そしてこれからできる気もしない私は、少し置いて行かれた気分だ。

もちろん、有紗の幸せは親友としてとても嬉しいものではあるけれど。



「そういうことなら付き合うよ。角田先輩がどんな人か見たいし」


「ありがとう、千秋!」