金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


新学期が始まって数日経ったある日、休み時間に私の所へ来た有紗がこんなことを言った。



「ねぇ、千秋って……先生以外の男の人だったら大丈夫なんだよね?」



私は少し考えてから、うなずく。

クラスメイトと会話をするのは平気だし、お気に入りの美容室ではいつも男性の美容師さんに髪を切ってもらっている。

自分でも不思議だけれど、激しく嫌悪感を覚えるのは教師だけなのだ。



「それなら、今日の放課後ちょっとつき合ってくれないかな……」


「いいけど……どこに?」


「場所は解らないの……先輩次第っていうか」



ハッキリした性格の彼女には珍しく、よく聞き取れないかすかな声で有紗は言う。

その上彼女は頬を赤く染め、瞳を少しだけ潤ませて悩ましげなため息を吐き出していた。


もしかして、その先輩って……