急に志望校を変更すると言う私に、岡澤は何も言わなかった。

理由は自分が一番わかっているから、反対しようにもできなかったみたいだ。


それよりも不安なのは両親の反応だった。

でも、通学に電車で一時間かかるS高に比べて、有紗の志望校は家から自転車で通える範囲にあったから、心配されるどころか経済的に助かると喜ばれた。


誰にも反対されなかった私は、すんなりと有紗と同じ高校を受験し、そして……合格した。



「やっと……楽になれるね、千秋」


「うん……」



合格発表の掲示板の前で、私は生まれ変わったような気持ちで有紗と自分の受験番号を見つめていた。

真新しくて心地よい風が胸の中を吹き抜けていき、私の心は希望に満ち溢れていた。




――――まだ、その時は。