「冬はこうやって、茎を短くして風をしのいでいるの。でもちゃんと昼間は花を咲かせるんだよ?強い花だよね」



そう言ってタンポポを見つめる有紗も、私と同じで花が好きだった。

ただ、有紗が好きなのは花壇に咲くような花ではなく、このタンポポのように力強く、それでいてきれいな野山に咲く花たち。


だから彼女は園芸部には入らず、三年間バスケットボール部で汗を流すことを選んだ。



「……春になったら茎を伸ばして、堂々と花を咲かせられるよね?」



私は、有紗の背中に問いかけた。

今の私は冬越しのタンポポみたいに縮こまっているけれど、春が来ればそれも終わりにできるよね?

つらい時期は……永遠じゃないよね?


振り向いた有紗は、私が何故そんなことを聞いたのかわかっているように、ふわりと笑って言った。



「うん。今はつらいかもしれないけど、春はみんなに来るものだよ。千秋にも、絶対に来る」