夏休みに入ると、その日のことばかりが気になった。

勉強していても、遊んでいても、何もしていなくても……先生と出かける日が待ち遠しくて、それと同時に少し、怖かった。


それでも、当日待ち合わせた公園で眩しい夏の朝陽に照らされる先生を見つけたら、私の気持ちは嬉しい方に大きく傾いた。



「おはよう。今日も暑いですね」


「おはようございます。先生、この車……」



先生の傍らには、真っ白な乗用車が太陽の光を反射していた。
車は持っていないはずなのに、また誰かに借りたのだろうか。



「あ、これは姉の車です」


「お姉さん……?」


「ええ。気が強くておっかないんですけどね、返す時に洗車をすることと、ガソリンを満タンにすることを条件に借りてきました」



気の強いお姉さん、かぁ。先生が優しいから、なんとなく想像がつく。

きっと美人なんだろうな、先生の兄弟だから。



「それじゃ、乗って」



先生は私をエスコートするように助手席のドアを開けて微笑んだ。



「はい、お願いします」



とりあえず、現地に着くまでは楽しい時間が過ごせるといいな。

私はそう思いながら、シートに腰を下ろした。