先生も、私を特別だと思ってくれているかもしれない……

一度そう思ってしまうと、先生の一挙一動が今まで以上に気になってしまって、私は毎日やきもきしていた。


だって、見れば見るほど先生はみんなに平等に優しい。


授業中、私と目が合う回数と同じくらい、他の女子のことも見ている。(もちろん男子もだけど)


――――やっぱり有紗の勘違いなのかもしれない。


そう思い始めたのは梅雨の始めの頃で、外の景色と同じく私の心にも厚い雲がかかっていた。



「起立、礼」



日直が号令をかけて、今日もすっきりしない一日が終わった。

恩田先生は、クラスの女子一人と楽しそうに会話をしている。

それを横目に見ながら私は席を立った。


傘ないから、雨が降る前に早く帰ろう……



「――三枝、ちょっといい?」



私の目の前に、一人の男子が立ちはだかった。



「土居くん……」



それは爽やかな見た目に反して強引な一面を持つ、あのとき助けてくれた彼だった。